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──もう何度目だろうか。あんたが居ない春を迎えるのは。
本部から少し離れた小高い丘の上に、それはあった。
『アイリーン・リディア 享年20』
綺麗な赤いチューリップの花束の下にある、白い石板にはそう彫られている。
石板の上にある十字架には、すっかり錆び付いているがおそらくシルバー製だったであろうネックレスがかけられ、風でゆらゆら揺れている。
バジルは、アイリーンの墓の前に座り込んでいた。
「…はは、信じられるか?アン、俺あんたよりもう…5つも年上なんだぜ?」
くく、と皮肉そうに笑い、バジルは続ける。
「皆元気だ。ルミナやエリスも相変わらず。シオンやシグレはよく働いてくれてる、全くあいつらは手間のかからない部下で助かるぜ。…ただ、リベラルとワーカホリック。あいつらはまだまだ俺が面倒見てやらねぇとな」
…あの時、俺にもう少し力があったなら。
あんたはまだ俺の隣に居て、情けない等と叱っていただろうに。
「本当に、情けねぇよ…!」
顔を歪め、バジルは拳で地面を殴った。
「──バジルさん、やはり此方でしたか」
不意に声を掛けられ、バジルは少々驚いたように振り返った。
視線の先には、赤いチューリップの花束を手にしたリベラルと相方のワーカホリックが立っていた。
「お前ら…」
「ルミナさんに此方だと伺いましたので。ついでに僕達もお墓を」
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