*第一幕*

3/5
前へ
/5ページ
次へ
    ──もう何度目だろうか。あんたが居ない春を迎えるのは。     本部から少し離れた小高い丘の上に、それはあった。   『アイリーン・リディア 享年20』   綺麗な赤いチューリップの花束の下にある、白い石板にはそう彫られている。 石板の上にある十字架には、すっかり錆び付いているがおそらくシルバー製だったであろうネックレスがかけられ、風でゆらゆら揺れている。   バジルは、アイリーンの墓の前に座り込んでいた。   「…はは、信じられるか?アン、俺あんたよりもう…5つも年上なんだぜ?」   くく、と皮肉そうに笑い、バジルは続ける。   「皆元気だ。ルミナやエリスも相変わらず。シオンやシグレはよく働いてくれてる、全くあいつらは手間のかからない部下で助かるぜ。…ただ、リベラルとワーカホリック。あいつらはまだまだ俺が面倒見てやらねぇとな」       …あの時、俺にもう少し力があったなら。 あんたはまだ俺の隣に居て、情けない等と叱っていただろうに。     「本当に、情けねぇよ…!」   顔を歪め、バジルは拳で地面を殴った。       「──バジルさん、やはり此方でしたか」   不意に声を掛けられ、バジルは少々驚いたように振り返った。 視線の先には、赤いチューリップの花束を手にしたリベラルと相方のワーカホリックが立っていた。   「お前ら…」   「ルミナさんに此方だと伺いましたので。ついでに僕達もお墓を」  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加