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むかしむかしあるところに、お爺さんとお婆さんと、桃太郎という青年が住んでいました。
桃太郎は正義感が強く、真面目で優しい心を持ち、膂力強く剣技に長け、村中で評判の若者でした。
そんな若者が、近年あちこちで悪さを働く鬼を退治すると言って旅に出ます。
道中では、お婆さんから貰ったきびだんご一つで犬、キジ、猿を家来とし、海辺の村で船を借りて鬼ヶ島へと向かいます。
その鬼ヶ島では、自分達より小さく非力な人間一匹と小動物三匹が船に乗ってやって来るのを確認しましたが、まさか自分達を退治しに来るのだとは露ほどにも思っておらず、ある鬼はぼんやりと、またある鬼は”食い物”が来たと鼻で笑っていました。
ですが、それは大きな間違いでした。
桃太郎は、”非力な人間”などではなく、鬼達の予想をはるかに凌駕する力を持っていたのです。
島に降り立った桃太郎は、へらへらとした顔で近づいてくる数匹の鬼のうち一匹を電光石火の抜刀術で一刀のもとに斬って捨て、次いで流れるような動きで一匹、二匹、三匹とその巨体へ刃を縫いこませてゆき、瞬く間に全て斬り殺してしまいました。
驚いたのは鬼共です。仲間を殺された怒りに顔を強張らせ、手に手に桃太郎の倍ほどの巨大な金棒を振り上げて、一斉に桃太郎に襲い掛かります。けれど金棒は虚しく空を斬り、地面を叩き、”ぐわん”と大きな悲鳴を上げます。更には密集して襲い掛かったために振りぬいた金棒が仲間に当たり、それに怒った鬼が同士討ち始める始末です。その中を、桃太郎はひらり、ひらり、と鬼達をかわしつつ刀を華麗に舞わせ、周囲を血で染めてゆきます。
その間、三匹の”家来”は遠巻きにその戦いを見ているだけでした。
ただ、それは絶対的な自信を持った桃太郎の作戦だったのです。
桃太郎の阿修羅の如き働きに漸く恐れをなした鬼共は我先に逃げ出そうとします。すると、すかさず三匹は鬼の船を沖に逃がして、鬼を島から逃がさないようにしたり、離れた所から目や足に”石つぶて”をぶつけて動きを止めたりして桃太郎の、こうなってしまっては虐殺と言って良い行動の手助けをします。
こうして、どうすることも出来ず怯えるだけの鬼どもを、桃太郎は笑みさえ浮かべながら一人一人に止めをさして回り、遂には全てを斬り殺してしまいました。
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