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すると王様は、部屋の隅に控えていた臣下の一人に、お主はあの服が見えるかと聞きます。臣下は、自分が馬鹿だと思われたくなかったので、見えます、と嘘をつきました。しかしそれを怪しんだ王様は、表情を厳しくして再度臣下に同じ事を問います。すると、その臣下は嘘をついたことが怖くなったのか、地に頭を付けて謝り、正直に見えないと言いました。王様はその嘘を笑って許し、詐欺師に向かってこう言いました。
「やっぱそれ、いらねーわ」
「へ?」
「だってさ、馬鹿には見えないんだろ? この世に頭の良い奴なんて俺とお前と、後何人いるんだ? どう考えても馬鹿な奴の方が多いだろ。その服を着たら、俺は馬鹿な奴らに王様は裸だ、って馬鹿にされるんだぜ。それこそ本当の馬鹿じゃねえか。だからイラネ」
と、残念そうな表情を作りつつも、服をしまうように命じます。しかし詐欺師の労は認め、褒美を与えて帰す事にしました。
結局、王様は最後まで詐欺師の嘘を見抜けませんでしたが、皆の前で醜態を晒す事だけは免れました。
詐欺師は詐欺師で、何だか思っていた展開と違い少し納得がいきませんでしたが、
「ま、いっか」
と褒美に貰った、金貨詰まった袋をジャラジャラ鳴らしながら、ウッキウキで城から去って行きましたとさ。
おしまい おしまい
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