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むかしむかしあるところに、兎と亀がいました。
兎は事あるごとに亀を、ノロマ、ノロマとバカにしていました。
そんな兎の事を、流石に亀も頭に……来ませんでした。
「ホントの事だしなぁ」
と達観した様子で、兎の悪口など一向に構う事無く日々を過ごします。
(これじゃあ話がすすまねぇ)
と思いつつ無駄な使命感に駆られた兎は、亀をバカにし続けましたが、何の反応も無いので、次第にアホらしくなって結局何を言う気も失せてしまいました。
亀の周りの者達は兎の嫌らしさに腹を立てていたので、いくら本当の事だとしても、
「よく怒らないでいられたものだ」
と感心しましたが、
「怒ったってしょうがないじゃん? 言い返す? 喧嘩? ハハ、そんな事するんだったら、あの道の先まで俺を連れてってくれ、ってアイツに頼むよ」
と笑いながら言いました。事実、亀は兎に対して、自分が行く事さえ困難な遠く知らない場所へ運んでくれないかと頼み込んでいました。
初めは鼻で笑って拒否していた兎も、あまりのしつこさに根負けしてしまい、
「しょうがないな」
と苦笑しながら、ときたま亀のタクシー代わりを勤めるのでした。
それから亀は幾度も兎タクシーにのり、兎も甲亀の羅の上で肩肘を付いて眠りこけたりと、気の許せる友達同士になったとかならないとか。
おしまい おしまい
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