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そこへ王子様がやってきました。
王子様は容姿端麗で性格もよく、国中の人気者でした。彼の登場で場内、特に女達はどよめきます。
王子様は挨拶をすると、周囲を見渡します。すると他の男達と同様に、シンデレラを見つけると一目で心を奪われてしまいました。そして他の女には目もくれず、周りに群がる男達を退けさせシンデレラのもとへ向かいました。
「私と踊ってくださいませんか?」
そう優しく語し掛けます。
シンデレラも他の女達と同様に王子様に憧れを抱いていましたが、いざ目の前にすると物怖じしてしまい、
「私は踊りが苦手なので」
と言って、事実ではありますが断ります。勿論それを見ていた周りの女達は、王子様のお誘いを断るなんて、
と腹を立てます。
「私がフォローしますから大丈夫ですよ。形など気にせず、楽しく踊りましょう」
と王子様は優しく、もう一度誘いました。
それでもシンデレラは躊躇います。今まで男達の誘いを全て受けずにきたのは、周囲の雰囲気に気圧されてと言う事もありますが、自分のダンスが下手なせいで相手に迷惑を掛けてしまうかもしれないと思っていたからです。勿論、恥ずかしいからと言う理由もあります。相手が周囲の注目を一手に集める王子様なら尚更です。形を、そして周りを気にしないわけには行きません。
そんな心のうちを知らない王子様は、差し出した手と、柔らかな微笑を引っ込めようとしません。ついにはシンデレラも困り果て、
「私でよければ……」
と誘いを受けざるをえなくなりました。
シンデレラは何度もミスをしました。
王子様の靴を踏んでしまったり、自分のスカートに躓いてしまいそうになったり、回る方向を間違えてぶつかってしまったり。その都度王子様はフォローします。
「大丈夫ですよ」
そう言って笑いかけ、よろけるシンデレラを抱きとめ、周りを気にしようとするのを優しくたしなめます。そんな王子様の態度にシンデレラは気を許し、心が楽になっていくのを感じました。そして時間の経つのも忘れて二人は踊り、語らい、微笑みあいました。
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