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むかしむかしある村に、姿形、声までもがそっくりな二人の少年がいました。
一人の少年は真面目で正直なので周りから可愛がられ、綺麗な小屋と綺麗な服、そして暖かな食事を与えられていました。
けれどもう一方の少年は、怠け者で、人の嫌がる嘘を吐いては笑っていました。なので周りから嫌われ、汚い小屋と汚い服、冷たい食事を与えられてなんとか日々を過ごしていました。
ある日、近くの山に凶暴な狼が棲み付いたと言う噂が村に流れます。村人達は不安で溜まりません。
ですが嘘吐きな少年には、これは格好の材料でした。
皆がせっせと家事や畑仕事に精を出している頃、誰にも相手にされない嘘吐きな少年は一人、村はずれの小高い丘に寝そべります。そして、あたかも狼が現われたという風に驚き、其処から跳ね起きて、
「狼がきたぞー!」
と必死の形相で叫びながら、丘を駆け下りました。
村人達にして見れば、どうせ何時もの嘘だろうと始めは思いましたが、少年の様子に恐怖心を刺激されて、遂には本当だと信じてしまい大慌て。女子供はバタバタと家の中に逃げ込み、男達は手に手に武器を持ち、
「あっちだよ!」
と言う少年の言葉を信じて、いもしない狼を狩りに行こうとしました。
その様子に遂に堪え切れず、少年は大笑い。
後ろからの突然の笑い声にぎょっとなって男達は振り返り、そこで漸くこれが嘘だとわかると、情けないやら腹が立つやらで言葉もありませんでした。
結局、嘘吐きな少年は村の大人達に囲まれて叱られましたが、へらへらとした顔をするばかりで全く反省の色は見られません。しまいには皆諦めて帰っていきましたが、その間、大人たちに混じってじっとその様子を眺めていたものがいます。正直な少年です。
正直な少年は不思議でなりません。自分のように真面目に働いていれば、叱られる事もないし、美味しいご飯も食べられるしで、いい事ばかりではないかと思うのです。
何故そんなことをするのか? 正直な少年は気になってしまい、その夜、嘘吐きな少年の家を訪ねますが、そんな疑問に嘘吐きな少年は笑って答えました。
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