霞む道の行方

6/13
前へ
/28ページ
次へ
平原の奥にはまた別の森の入口。 あそこに入ってしまえば…、このままじゃ……。 村にも家族にも、二度と帰れなくなってしまう。 気を強く持とうと、泣きたいのを我慢していた…、限界になりそうだ…。 瞳が潤んで、紗霧の視界が霞む。 『…っ……(もう、駄目…かな、私)。』 涙が一滴、頬を滑る。 心細くなった時だった。 一俊の、風切り音。 何かが素早く横切る音。 『ぐはっ…。』 男達の一人が、鈍い声で前に倒れた。 倒れた男の背中には、一本の矢が突き刺さっていた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加