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もう一人で生活している今でも、
やっぱり僕は秘密を隠している。
だってそうだろう。
決まり事だらけのこの国では異形ははじかれる。
知られた途端に安穏な生活はできなくなる。
「カズラってば、ほら!
家に着いたらまた出てきていいから」
一応注意してみるも、
カズラは鼻をならすように強酸をどこぞの壁に飛ばしただけで
やっぱり引っこんでくれない。
この子は結構強情だ。
仕方ないので人に見られないよう、
更に人気のない裏通りへと足を運ぶ。
植物達が思いがけず出てきた時のために
人に会わずに帰る方法は何通りか習得済みだ。
人が通らない所は光の差さない薄暗い場所が多い。
それとも薄暗さを嫌うから人が通らないのか。
視界の悪い中、
身をかがめて狭い通路を通り抜けたり
足場の悪い場所を跳び越したりして着々と家へと近づく。
その間カズラはやっぱり引っこんでくれなかった。
日の差さない路地が嫌なのか
時折ぎゃいぎゃいと背後で暴れている。
「暗いのが嫌なら引っ込めばいいのに……」
そうぼやきながらも僕ははて、と首を傾げた。
これまで僕から生えてきた植物の中でも
カズラは特に日の光を好む。
そしてわがままで強情だ。
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