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引っ込まないのはその性格故かと思ったのだけれど……
光が好きなカズラがこんな薄暗い路地裏で
いまだに出っぱなしなのは少しおかしいかもしれない。
おまけに暴れ方も段々とエスカレートしてきた。
「ちょっと、カズラ?」
その尋常でない暴れ方になんとなく異変を感じて
カズラの方を振り向く。
カズラはあろう事かついに傍の壁に
体をぶつけ始めたのだ。
今までにない暴れ様に僕は戸惑った。
現代の平和なこの国で
おそらく90パーセントの人は植物に服を熔かされかけたり
撃ちだした種子の一種で死にかけたりした事はないんだろうけど、
それでもそんな非常識を背中に背負う僕にも
植物が意味もなく暴れだすなど
初めての事態だったからだ。
何かカズラに妙な事をしてしまっただろうか?
朝にあげた水が良くなかったとか。
そういえば最近産地偽装が流行ってるよな。
そう考える暇もなかった。
カズラが体をぶつけていた所は
トタン板でおざなりに応急処置してあっただけらしく。
「え」
猛アタックに悲鳴を上げたトタン板はついに破れ、
開いた穴に突進したカズラに引っ張られて
僕は転げ落ちたのだ。
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