150人が本棚に入れています
本棚に追加
たぶんおもちゃです、なんて言い訳はもう通用しないだろう。
挙句の果てにカズラは体を伸ばして
女の子の方にまで近寄って行ったのだ!
「ちょっと、カズラ……!」
制止しようとカズラを掴むも、
その腕ごとからみついて女の子の手に
体を寄せる。
これではまるで僕が女の子の手を
握ろうとしているようじゃないか!
「ああああああ、あの、
これは別に、」
「なんだ、お前もか」
異性に対するコミュニケーションは慣れていないので
思わず真っ赤になったけれど、
なんだって?
今彼女はなんて言った?
カズラがからみついたのは
僕を殴った彼女の右手。
冷たい空気が触れた僕の方へ流れるのを
数回感じ取った。
空気は僕、というより子犬がじゃれあうようにカズラに流れ、
カズラはそれをくすぐったそうに身をよじった。
「……風……?」
「お前は草か」
女の子はカズラに驚いてはいるけれど、
別段気味悪がったりする様子はなかった。
むしろカズラの好意的な態度で
まとわりつく風は更に量を増やしている。
と、いうことはつまり。
不思議な現象って結構どこにでもあるんだなー、
と呑気に思ったところで限界だった。
.
最初のコメントを投稿しよう!