一番:追われる彼女と巻き込まれた彼氏

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人にない力ってのは色々と便利だぜ? 唇の端を上げて女の子は笑った。 そして、これまで静まり返っていた周辺が 突然騒がしくなった。 まるでつんざくようなこのサイレンは…… パトカーの物だ。 それも一台や二台なんていうかわいい物じゃない。 僕の耳がおかしくなってなければ、 それらの音は段々こちらに近づいてきていた。 すごく嫌な予感がする。 「あ、やべ。 もうきやがった」 軽く言った後、 女の子は傍らに放り出されてあったスポーツバッグを拾い上げた。 よく見てみれば それは女の子が持つ、というには少々汚れが過ぎる気がした。 彼女自身の汚れは 僕が下敷きにした物かもしれないが。 「えーっと……」 「ああ、あたしは馬上 風香だ。 風香でいいぜ」 「あ、僕は則渡 柊です。 じゃあフウカちゃん」 「なんだ」 「ここで……君は一体何をしていたのかな?」 薄暗い裏路地の、 階段を抜けた更に奥の小さな更地。 どう見たってこんな女の子がいるべき場所じゃない。 「このやかましいサイレン聞きゃわかるだろ。 サツから逃げてんだよ」
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