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「ああ、ここが……」
一本道を歩くこと数分、僕は風香ちゃんのいうアパートに到着したようだった。
なんていうか、古い。
今時木造で所々草が生えている。
建物に!
カズラにはなんとか引っ込んでもらったが、
この分だと興味を示して他の子が出てくるかもしれない。
さっさと事を済まそうと、
僕はそそくさとアパートの中へ入っていった。
かろうじて『一○四』と書かれたのが分かるドアをノックする。
インターホンの機能性は信用できなかった。
「はーい」
高い声の後
ドアがガチャガチャと音を立てて開いた。
「どちらさまですか?」
一瞬宙をさまよった視線は、
下に下げることで小さな男の子を映した。
小学校低学年位のようだ。
目の辺りがどことなく風香ちゃんに似ている。
なんのためらいもなくドアを開けた事にも驚いたが、
それよりも僕はその子の格好に驚いた。
「えーと……
僕は風香ちゃんに用事を頼まれた則渡 柊と言います。
君は馬上 風太君だよね?」
「はい」
「……なんで部屋の中でコート着てるの?」
あろうことか、その子はコートどころかマフラーや手袋まで完全装備だった。
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