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恐る恐る後ろを振り返ってみれば、
やっぱり、いた。
「どちらさまでしょうか……」
尋ねる間もなくその男の人は
黒光りのする手帳を取り出した。
風香ちゃんが来なかった理由らしい張り込みの刑事さん。
「あー、えーと……」
「君は誰だい、馬上君の弟を
こんな時間に連れ出してどこへ行くつもりだ」
とっさに何か言い逃れしようと思ったけど、
僕はそんなに口がうまい方でもなかった。
僕と風太君の方へ詰め寄る刑事さんの言葉に
ふと疑問に思い、首を傾げてみる。
「馬上君?
張り込みの容疑者を呼ぶには
やけに親しいですね」
その質問に対する答えはなかった。
刑事さんは片眉を上げただけだ。
「いつもの刑事さんだ」
ぼそりと呟いた風太君の言葉も気になったが、
「とにかく、身分を証明する物を見せなさい。
なんなら、署にまで来てもらおうか」
どうやら刑事さんは僕の事を不審者とみなしたらしい。
このままではまずい。
後に思えば僕が連れて行かれても
なんら悪い事はしていないんだから
別に大人しく従ってもよかったのだろうが、
『既に共犯』という文字が僕の脳を占拠していた。
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