三等:つっぱる彼女と怒った彼氏

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恐る恐る後ろを振り返ってみれば、 やっぱり、いた。 「どちらさまでしょうか……」 尋ねる間もなくその男の人は 黒光りのする手帳を取り出した。 風香ちゃんが来なかった理由らしい張り込みの刑事さん。 「あー、えーと……」 「君は誰だい、馬上君の弟を こんな時間に連れ出してどこへ行くつもりだ」 とっさに何か言い逃れしようと思ったけど、 僕はそんなに口がうまい方でもなかった。 僕と風太君の方へ詰め寄る刑事さんの言葉に ふと疑問に思い、首を傾げてみる。 「馬上君? 張り込みの容疑者を呼ぶには やけに親しいですね」 その質問に対する答えはなかった。 刑事さんは片眉を上げただけだ。 「いつもの刑事さんだ」 ぼそりと呟いた風太君の言葉も気になったが、 「とにかく、身分を証明する物を見せなさい。 なんなら、署にまで来てもらおうか」 どうやら刑事さんは僕の事を不審者とみなしたらしい。 このままではまずい。 後に思えば僕が連れて行かれても なんら悪い事はしていないんだから 別に大人しく従ってもよかったのだろうが、 『既に共犯』という文字が僕の脳を占拠していた。
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