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(カズラッ、頼む出てきて!)
小声で呼びかければ背後に慣れた気配。
重要な時は外さないから
頼りになる。
正面の刑事さんに見つからないよう
背後から足元へカズラをしのばせる。
途中、風太君がはっと息を飲むのが分かった。
カズラの花部分から一滴の液体が垂れた時、
白煙が舞い起こった。
「な!
……なんだ!?」
刑事さんが戸惑っている間に
風太君を抱えて逃げる。
きっと道路にはカズラが溶かした
アスファルトの小さな穴が残っている事だろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「すごいや、柊さん!」
目を輝かせながら風太君が言う。
視線の先には無理やり引っ込ませて
今はいないカズラの生えた背中部分。
その時僕は
『別に逃げなくても良かった』という事実に打ちのめされていた。
刑事さんをまいて十数分、
あわてて逃げたものだから道を間違えたので
結構な時間がかかっていた。
「煙幕を作って逃げちゃうなんて!
あ、次は右だよ」
迷わなかったのは
風太君による的確なナビゲートのためだ。
本当にこの子、風香ちゃんの弟なのかと
疑いたくなる。
「いや……煙幕っていうよりかは
かなり少なかったけど」
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