三等:つっぱる彼女と怒った彼氏

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(カズラッ、頼む出てきて!) 小声で呼びかければ背後に慣れた気配。 重要な時は外さないから 頼りになる。 正面の刑事さんに見つからないよう 背後から足元へカズラをしのばせる。 途中、風太君がはっと息を飲むのが分かった。 カズラの花部分から一滴の液体が垂れた時、 白煙が舞い起こった。 「な! ……なんだ!?」 刑事さんが戸惑っている間に 風太君を抱えて逃げる。 きっと道路にはカズラが溶かした アスファルトの小さな穴が残っている事だろう。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「すごいや、柊さん!」 目を輝かせながら風太君が言う。 視線の先には無理やり引っ込ませて 今はいないカズラの生えた背中部分。 その時僕は 『別に逃げなくても良かった』という事実に打ちのめされていた。 刑事さんをまいて十数分、 あわてて逃げたものだから道を間違えたので 結構な時間がかかっていた。 「煙幕を作って逃げちゃうなんて! あ、次は右だよ」 迷わなかったのは 風太君による的確なナビゲートのためだ。 本当にこの子、風香ちゃんの弟なのかと 疑いたくなる。 「いや……煙幕っていうよりかは かなり少なかったけど」 .
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