150人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここの近くに廃墟があってな、
そこが暴走族のアジトだ。
朝になったら殴りこみに行く」
殴り込む前に凍死すれば
どうしようもないと思うんだけどなぁ。
色々突っ込みどころはあるものの、
風香ちゃんは本気だ。
せめて近くのホテルに泊まるとかしたらどうだと
言いたかったが、
あのアパートに住んでいるのを見る限り
彼女たちにそんな所持金はないだろう。
薬局帰りの僕にだって三人分泊めてあげるだけの
お金はない。
「しょうがないなぁ……
ナツ」
風太君がよそを向いている隙にこっそりと力を使う。
呼びかけに応じて出てきてくれたのは
巨大なツタ、『ナツ』(と呼んでいる何か)だ。
カズラと同じような外見をしているナツだが
彼は『ジャックと豆の木』に出てきそうな程の大きさを誇る。
僕の指示であっという間にテントを覆ったナツは、
すぐさま本体とテントを覆った部分を切り離して
僕の背中へ戻って行った。
彼の体は物質が変形しない程度に発熱する。
本体から切り離しても効果は数時間持続するので
長旅に優れ物だ。
一部始終を見ていた風香ちゃんが口笛を吹いた。
「スゲーな。
ちなみに発熱のエネルギーはどっから?」
最初のコメントを投稿しよう!