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あたしのグラスに酒を注ぎながら朱音が首を傾げる。
奴の膝の上に乗る黒猫が
その拍子に朱音の方を見た。
「どういう意味だそりゃあ」
「そのまんまですけど?
だって仲いいじゃないですか、お二人」
私達だって負けてませんけどね、
と自分の恋人でも思い出したのか頬を紅潮させる朱音に
若干惚気を感じつつあたしは眉間にしわを寄せた。
膝に乗る黒猫もそう思ったのか、
しきりに顔をなめるように毛づくろいする。
「どうでもいいけどよ、お前んち猫飼い始めたのか?」
「いえ、違いますよ。
最近仲良くなりまして」
黒猫のふわふわした巻き毛を撫でながら
朱音はのほほんとそう言った。
おい、どこ歩いたかもわかんねぇ野良猫を
家に上げるのはさすがにまずいだろ。
「やだなぁ、いくらかわいくても
野良猫を上げたりはしませんって!
彼は別なんですー」
撫でるだけでは足りなくなったか
黒猫に頬ずりし始めた朱音の答えに首を傾げたが、
あまり追及せずにあたしはまた酒をあおった。
「……別に喧嘩じゃねぇよ」
ぼそりと呟いた言葉に
朱音は猫をいじる手を止めて目を丸くした。
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