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「違うんですか?
だって、喧嘩したから荷物まとめてここに来たんでしょ?」
あたしの家は高校の頃
両親が離婚のちごたごたしている間に両方他界してしまったので、
売り払って弟との生活費に消えた。
住んでいたアパートも柊との結婚を機に引き払ったため
一般に言うような実家は今のあたしにはない。
「喧嘩っつったってあたしが勝手にまくしたてて
飛び出しただけだっつの。
……柊にもおめぇにも悪い事しちまったな、
明日になったら戻るからよ」
といっても明日になれば
柊は学会とやらで出かけてしまっていなくなる。
海外と言っていたので再び会えるのは数日後になるだろう。
元々その話が原因で
あたしは旦那に平手打ちをかましたのだ。
「しょうがねーって分かってるけどよぉ……
『約束』したじゃねーか、あの時」
「約束?」
机に突っ伏しながらうわ言のように呟いて、
すぐにしまったと気づく。
目の前にはゴシップアンテナをおっ立てて
興味津々でこちらに迫る朱音がいた。
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