一番:追われる彼女と巻き込まれた彼氏

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「えーと、これが確か一番で…… ああっ、違う!」 帰り道、 あまり人気のない通り。 問題集をめくり、間違っていた事に落胆して 僕はガシガシと頭をかいた。 もうこれで三回連続だ。 全く、僕って奴はどうしてこう覚えが悪いんだ! 則渡 柊、大学六年生。 薬剤師志望で只今薬局にて見習修行中。 薬剤師の国家試験まで、後……数か月。 いくら大学での授業とはいえ、 本物のお店で働いている以上手抜きはできない。 だからペーパーテストの勉強は こうして行き帰りの途中でするしかない訳で。 試験が迫るプレッシャーと刻一刻と減っていく数か月の時間が 僕の焦りを増大させる。 特に比較的真面目な性格だから、 勉強しないとダメなんじゃないだろうかと 休息している時でさえ気が抜けない。 「……ダメだよ、カズラ。 いくら人気のない所だからって、 急に出てこないで」 問題にチェックを入れていると、 不意に背後に何かがやってくるのを感じた。 いや、何かが生えたと言った方が正しいかもしれない。 振り向かなくてもわかる、 僕に寄ってきた植物の一種だ。 現に僕の頬に触れたそれは まぎれもない植物の葉。 .
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