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「起きろ!ボケェ!!」
俺、真道奏(しんどう そう)の朝はその一言で始まった。
俺は、起きたくないよー! と悲鳴を上げる体をムクリと起こして暴言の相手へ向ける。
「……おはよう。なあ、一ついいか?」
それはショートカットの少女。勝気な目からは意志の強さが分かる。
「なに、手早くしてね」
鋭い視線でそう言う。
「お前は俺の幼馴染だ」
「そうね」
「そして名前は、美袋愛美(みなぎ えみ)という可愛い名前だ」
「……き、急に何よ」
僅かに頬を染める愛美に、一息を吐き言葉を続ける。
「普通、女の子の幼馴染なら……『ねえ、お・き・て……』と優しく言うもんだろ?」
「……キモ」
そして、数秒の沈黙。
「着替えます……」
苦々しく俺がそう言うと、愛美は短く「……そう」と気味悪げに言い俺の部屋を出て行った。
ちゅんちゅん、と鳴くスズメが目に入りカーテンを開き、窓をその流れで開く。
今日も朝から晴天で申し分ない。温かい光を一杯に浴びつつ、天高く響けと叫ぶ。
「神様ー! 可愛い幼馴染を俺にくれえええええええ!!」
扉を叩くように開ける音、俺はゆっくりと振り返ると同時に拳が顔面を強打した。
「おらあ! 早くしろ!!」
混濁する意識の中で、俺は確かに愛美の温もりを感じた……鼻血を噴き出しながら。
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