WORLD1:体裁

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─────────────… 「響子ちゃん、おはよう……」 「おはよう、沙織」 ここは私達の教室である1-12。 個性的な面々が集っているこの教室。 皆がそれぞれいい個性を発揮している。 しかし、私、広口響子は全くと言って特徴がない。 成績、普通よりちょい上。 運動、ちょっと球技が得意。 容姿、特に……いや全然特徴なし。 そんな感じだった。 別に暗い性格ってわけじゃない 人並みに遊びに出かけるし、好きな人だっている。 喋り方だって今時風にしているし、携帯だって持っている。 何がいけないんだろう。 どうしていけないんだろう。 何が違う? それは、一つ。 個性が無いこと。 それに比べると、今一緒に歩いている清水沙織は特徴が多い。 まずは元祖読書っ娘。 成績、下位。 運動、全く駄目。 容姿、眼鏡っ娘。 だから、そういうことで俗にいう『いじられキャラ』 いつも、楽しそうに見えた。 見たときはいつも笑っていた。 そんな彼女が憎くて仕方なかった。 クラスの輪に入って盛り上がるあの子が。 唯一の友達が憎かった。 だって、私は存在自体薄いからこのクラスにいる意味なんて無い。 声には出せなかった。 いつも笑顔だった。 どんなに後ろ指差されて笑われても私は泣かなかった。 負けたくなかった。 こんな馬鹿な連中に。 でもこのクラスの連中にとって私なんて必要ないのだ。 輪に入れなかった。 声を掛けられなかった。 ただそれだけなのに、皆からは必要とされなかった。 笑えてくる。 そんな連中のために涙を流した日々。 傷つけられた私のプライド。 全部笑えてくる。 震えるほどに、心が病むほどに。 それから数日後いきなり事件は起こった。
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