夏vacation。

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それは…いつもと変わらない蒸し暑い夏の日に起こった…。 ――――― 「健太郎、どこ行くの?」 家の玄関に立つ俺に向かって、お袋が声をかけた。 「散歩。その内戻る。」 もう高校生なんだ。散歩ぐらい勝手に行かせてほしいぜ。 そんな事を思いながら流し目でお袋を一瞬見て、俺は家を出た。 「ちょっと、暑いんだから帽子くらいかぶって行きなさい!」 鬱陶しい忠告を無視して、俺は家の前の、無駄に日当たりの良い道を歩き出した。 別に目的があるわけじゃない。長い夏休み、いつまでも家の中にいたんじゃ腐っちまうと思って出かけて来ただけだ。 とはいえ、今となってはそんな考えもくだらなく思えてくる。 夏休みに入ってしばらくたつが、今日は特に暑い…こんな事ならどれだけ腐ろうが、クーラーの効いた部屋でジャンプでも読んでた方がマシだった。 とにかく、このままじゃぶっ倒れるな…だが今更家に帰ってもお袋がうるさいだろうし…不本意だが、誰か友達の家にでも行くか? …いや、それだけはやめよう。 正直、対人関係は得意ではない。できれば、他人との関わりは避けたいとさえ思ってる。 それでも、最低限の関係、友達と呼べる仲間は欲しい。 そんな矛盾した事ばかり考えてるから、高校生にもなって彼女イナイ歴=年齢なんだろうか?……やめよう。気分は寒くなったが、体感温度はむしろ上がった気がする。 と、とりあえず近くの防波堤にでも行ってみよう。 あそこなら日は防げなくても、こんなアスファルトの上にいるよりは涼しいだろう。 ちょうど潮風にでも当たって、黄昏たい気分にもなった事だしな。
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