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「……殺してくれ」 楓が,忠行を見上げ,呟いた。 「何故,死を望む?」 忠行は,静かに座している楓を見下ろした。 「私は―――皐夜家の足手まといなのだ」 「それ程の腕で,足手まといな訳無かろう」 座り込んでいる楓を斬ろうとする己が家臣を無言で制止する忠行。 その時,忠行の背後から大きな声が轟いた。 「時雨ッ!!!大丈夫か?!」 「兄上ッ―――――!」 声の正体は,皐夜家長男,一明だった。 弟が心配になり,引き返してきたのだ。 「皐夜家次期当主,一明か」 またも無表情で,忠行は口を開いた。 「兄上……私がまた御迷惑をかけてしまわれたのですね…」 自分がもっと頼りある武将なら,兄は引き返してくる事は無く,今頃は次期当主に相応しい武功を立てていたはずなのに――
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