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「兄上,時雨!」
続いてやって来たのは,皐夜家次男の猛火だ。
「こいつは―――」
「猛火,水瀬家次期当主だ。この者は……」
猛火が刀を構える。
視線は忠行に向けたまま,兄,一明に声を張り上げた。
「行かれよ,兄上!」
「時雨を…頼む!」
一明は再び家臣を連れ,敵陣に乗り込んで行く。
「何故負けた時雨を殺さずにいた。水瀬家次期当主は,衆道に興味が有るのか?」
挑発的な猛火に対し,忠行は鼻で笑い,楓を見た。
「楓,また会おう――」
そう言い残すと,忠行の目の前に忍びが現れ――
――ドンッ
と,音がなり,煙の中に忠行と忍びは消えて行った。
「水瀬――忠行」
楓は,悔しげに唇を噛んでいた。
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