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「姫様……初は…姫様がおいたわしゅうござります…」
お初は,悔しかった。
何故,楓がこんなめに?
「私はこれで良いのだ。初……泣くな。私は平気だ」
長年共に過ごしているお初の言いたい事は,解る。
だから,心配をかけない様に,楓は微笑んだ。
父や兄の前では決して笑わないのに――――
「初,私は幸せだ。皐夜家の役に立てる事は,私の望みだから」
皐夜家の繁栄こそ,己が夢で幸せなのだ。
それ以外は,何も望まない。
「姫様,大殿がお呼びでござりまする……」
「直ぐに,参る」
お初の嗚咽は,止まなかった。
「私は,幸せなのだよ。初…」
「初も,姫様にお仕え出来,幸せでござります…」
楓の微笑みは,揺らがなかった。
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