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「水瀬様の元へ参れば良いのですね?」
楓は特に反発せずに,父一志に尋ねた。
「すまん,時雨」
一志が,初めて楓に頭を垂れた。
「父上,気になさらないで下さいませ。私の願いこそ,皐夜家の繁栄です」
確固たる決意を父に見せる。
此処で,嫁ぐのを嫌だと言えば,今までの自分を否定する事になってしまう。
「私は,皐夜家に産まれ,だから皐夜家に尽くすのです」
更に言い含めると,父は頷き,やっと口を開いた。
「楓。この縁談,皐夜家の繁栄のために承ける事を命じる」
「楓,その命全ういたします」
一志は,胸の内で,楓に謝り続けていた。
「祝儀の儀は,何時行われるのでございますか?」
「水瀬殿は,なるべく早い方が良いとお望みだ」
――自分が皐夜家を出るのは,すぐ
楓は,内心溜め息を吐いた。
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