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「お初を,お前と共に水瀬家へ向かわせるつもりなのだが…」 一志は,猛火へと視線を移し,楓に告げる。 「お初殿なら,時雨の良き理解者だと思っての判断だ」 「兄上…お心遣い,有り難く存じ上げまする」 猛火は,首を横に振る。 「俺達は……今までお前だけに苦労をかけてしまっていた」 突然頭を垂れた猛火に,楓は歩み寄りその頭を己が胸に抱いた。 「兄上。私は,苦労等とは思ってはおりません。逆に私が,皆に苦労をかけてしまっていたのです」 「違う…。時雨は,何時も自分を犠牲にしてきた。兄である,俺達がお前に甘えていたのだ」 普段は寡黙である猛火が,毒を吐く様に,語り続けた。 「お前に恨まれているのは解っておる…だが,この兄を許してくれッ………」 猛火は,泣いていた。 もう後悔しても,楓の婚儀は取り止めには出来ない。
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