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――頭が,ぼうっとする 楓は,輿に乗り,水瀬の城へやってきた。 少しだけ,怖かった。 男達は,欲望の目で自分を見るのだから。 「若君の準備が出来るまで暫しお待ち下され」 老臣が,楓に語りかけた。 ただ無言で,待った。 「若君が参ったぞ」 ――ビクッ 遂に,来た。 あの日以来の再会。 「楓。久方ぶりじゃな……」 頭を垂れ,微かに震えている楓の顎をとり,顔を上げさせた。 「やはり……お前は美しい」 「若君。お戯れは後程になさって下され。婚儀の儀を致さねば」 水瀬忠行は,無表情に頷いた。 ――美しい? ――私が? 楓は,心の中で,自問自答していた。 「―――――――」 「―――――」 誰かが話しているが,頭には全く入ってこない。 此処からは,父や兄の顔が伺える。 だが,お初はいない。 侍女の一人であるお初は,部屋に控えている。 ――私は,美しくなんか無い この日,皐夜家の楓は,水瀬忠行の正妻,正室になった。
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