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辺りは一面血の海。 楓は,戦場に立っていた。 血,血,血。 皐夜家と,前々から因縁の深かった,水瀬家の戦だ。 「ゆけッ――水瀬を潰せ!」 楓は男とは思えぬ少し高めの声で,兵士達に命じた。 「おぉ――!!!!」 兵士達の士気が,爆発的に盛り上がる。 「…………………」 楓は,無言で水瀬の兵を斬り捨ててゆく。 「時雨ッ,大丈夫か?!」 兄,一明だ。 「兄上,私は気にせず己が武功をお立て下さりませ!」 楓がそう言うと,一明は頷き,戦場に走って行った。 「……見つけた…」 背後からの声に――楓の息が止まった。 気配を感じさせない程の敵が,今,自分の真後ろにいる――
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