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「何者だ――――」 何時もより,低めの声で背後の相手を威嚇する。 相手に背を見せていても,楓には隙一つ無かった。 互いに,動かない。 「私に隙等無いッ――!」 刃の長い刀を構えつつ,その漆黒の髪を揺らし,背後の男に振り返った。 「―――――――」 楓には無い,少し筋肉質な肉体を持つ男が立っていた。 筋肉質といっても,普通の男の体型であって,髪が,肩の辺りまで伸びている男だ。 「皐夜――楓」 男は,楓の名を呟いた。 「我が名を知っているか。お前は水瀬の者だな。名を名乗れ」 楓がそう言うと,男は無表情のまま口を開いた。 「水瀬家次期当主,忠行だ」 「次期当主――お前が」 ――こいつは,皐夜家の敵だ。 頭の中で,そう思った。
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