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「皐夜楓はまだ九つだと伺っておったが……」
忠行は,楓を舐める様に,上から下まで見詰めた。
「肉体は九つだが,我が精神はお前達より上だ」
構えを崩さずに,楓は水瀬家の次期当主,忠行を睨んだ。
「ほう……確かに美しいな。゙青い天女゙は」
゙青い天女゙とは,楓を表す言葉である。
楓は,何故だか解らないが,青い瞳を有している。
その美貌と青い瞳から,この異名が何時しかついていた。
「皐夜家の敵――今この場で討ち滅ぼすしか無かろうな」
低く,楓が唸る。
皐夜家の敵は,自分が滅ぼす。
次の当主は,兄,一明なのだから。
今まで自分を守ってくれた兄に,せめてもの恩返しだ。
その為に,自分は戦場に出て,不快な血をその全身に受けるのだ。
「こい,水瀬忠行――」
「良いだろう。俺を,楽しませろよ。皐夜楓……」
忠行は余裕の笑みで応えた。
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