夕立

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 微量の熱い液体が耳元に流れていく。堪らず寝返りを打って うつ伏せになる。途端に、溢れ出た。  「夕立だな。あいつらが帰ってくるまでに止むかねえ」  「うるさい」  ああ、嫌だ、情けない声。  夕立は直ぐに止むものだ。まもなく止むに決まっている。あいつらに、こんなものを見られて堪るか。  夕焼けの色が部屋を僅かに染める。烏の鳴き声が遠くに聞こえた。私たちが居るこの部屋だけに、夕立が音を立てている。      
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