ようこそ不思議の国へ

7/8
前へ
/31ページ
次へ
……何やってんだ、俺。 こんな時、ツッコミ役のなっちゃんが恋しくなる。なっちゃんがいればなぁ… 俺は切実にそんなことを思いながらハァ、と溜め息をついた。 まずここはどこなんだろ。俺はジュニアから視線をずらして辺りを見回した。 見た感じ、ただの廊下みたいだな。……ただし、中世ヨーロッパ風の。 俺は濡れた髪をワシャワシャと掻いてスライムを落とす。 ――そのとき、カツ…カツ…と誰かの足音が聞こえた。 俺は反射的に手の動きを止める。 方角的に多分すぐそこの曲がり角から音は聞こえる。一体誰だろう。そうこう考えている内にも段々と音は近付いてくる。 …そこで俺は急に不安になった。 知らない場所で独りぼっちで。もし不法侵入だと言われたらどうしよう。穴から落ちてきたと言えば信じて貰えるだろうか? いや、きっと誰も信じてはくれないだろう。 ああ神様、どうかこっちには来ませんように…。 カツ―…カツ―… しかし無情にも足音は大きくなってゆき、こちらに向かってきていることを知らせている。 足音的にも、相手はきっともうすぐそこだ。俺は拳をキュッと握って俯きキツく目を閉じる。 もう、終わりだ――…
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

214人が本棚に入れています
本棚に追加