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「でも美紗ちゃんがいるときはお前、時々笑ってたよなぁ~」
「なにが?」
「お? 無意識か? ごくたまに、ホントーにすごく稀にだけど普通に笑ってたぞ? あの嫌味ったらしい貼りつけたような笑顔じゃなくてさ」
それは知らなかった。
別に俺が全くの無感動人間というわけではない。
そりゃ人並みに感動だってするし、楽しいことは楽しいし、嬉しいことは嬉しい。
ただ表情には出さないだけ。
意図的じゃなくて、なんつーか俺にとってはそれが普通のこと。
要は普通の人が嬉しくって笑うのと同じ。
顔に出さないのが俺には普通。
だから藤田に言われ、少々驚いた。
まぁ……確かに美紗といるときは落ち着くというかなんというか。
「ま、俺ほどになれば祐太がどう思ってるかなんて顔に出なくても大体分かるけどねー」
「ほー、今はどう思ってる?」
「無意識に笑ってたって聞いて驚いたけど、俺に分かると言われてコイツうぜーし的なことを考えてる」
当たり。だけど――
「言ってて虚しくないのか?」
「だったら、んなこと考えんなよぉー……」
仕方ないだろ?
俺にとってはごく自然なことなんだから。
「でも美紗ちゃんが俺たちに絡んできたのは驚いた!」
「話飛びすぎ。でもそれも驚いた。アイツ、俺のこと嫌ってんだと思ったし」
自分の髪を一束掴む。
日に晒さなくても茶色。
藤田のように染めた色じゃなくて自然な色――
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