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「遅いっ! 遅刻する気か!」
珍しく始業時間まで5分も前に教室に到着したはずなのに、いきなり目の前に現れた女生徒に怒鳴られた。
いや、いきなり現れたは語弊がある。
勝手に人の席に座っていた咲山が立ち上がり、俺に怒鳴った。
俺は説明を求めるため、その前の席で眠っていた藤田を文字通り叩き起こした。
「いった! いきなり叩くなよ! で、なに?」
「何で咲山が俺の席にいる?」
「え? 知らね。なんか俺が来たときにはもういたし……つか本人に聞けよ、そこにいるんだからよぉ~」
俺たちのそんなやり取りを何故か笑顔で見つめている咲山。
別に変なことは言ってないが。
「あっ! もうチャイムが鳴る! んじゃまたねぇ~」
それだけ言って教室から出ていった。
俺と藤田はただ呆然とそれを見ていた。
俺らと同じく呆然と見つめている奴を発見。
あぁ、昨日のふられた奴か。
で、咲山のやつ、“またね”とか言ってなかったか?
一時間目が終わり、それが幻聴でないことが分かった。
「で、何でお前がいるんだよ」
自然に俺と藤田の横で昼飯を食べている咲山に聞く。
咲山は気にした風もなく、ただ親が作ったであろう弁当を食べ続けている。
「で、何で自然に溶け込んでんだよ」
本当に自然だ。
まるで違和感がない。
最初からいたかのような感じ。
まぁ周りからは痛いほど注目されてるが。
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