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「祐太ー」
突然後ろから名前を呼ばれ、振り返るとそこには明るい茶髪に少々つり目気味だが人懐っこい笑みを浮かべた男が手招きしていた。
「んだよ、藤田」
ここは大学内のカフェテリア。
次の講義まで時間があるうえに昨日のバイトのせいで軽い睡眠不足だったため、コーヒーでも飲もうとふらっと立ち寄ったところを、この藤田に捕まった。
寝不足のおかげで少々機嫌が悪かったので、藤田を睨み付ける。
「んな怒んなよ、ただ呼んだだけだろ?」
「呼んだだけなんだな? なら俺はこのまま立ち去るぞ」
「なっ、違くて! 話を聞けよ!」
まだ朝の10時を回ったところなので、カフェテリアには人は少ない。
まぁそうは言っても何人かはいるわけだから、バカ藤田が大声でそんなことを言ったため、俺は注目を浴びているわけで。
よって俺は仕方なしに藤田の前のイスに座り、かけていた伊達眼鏡を外した。
「はぁ~っ、祐太のせいで恥ずかしかったぁ~……」
「どこが俺のせいだ。お前が勝手に叫んだだけだろうが。全くいい迷惑だ、このバカが」
「相変わらずキッツ~……つーか高校ん時から変化ねぇのな」
「お前がいつまで経っても成長しないせいだ」
軽くため息をつき、目の前の男に向き直る。
自分で染めた茶色い髪、笑うとかなり細くなる目、Tシャツの上にオレンジのチェックのシャツを着ている。
世に言う今どきの若者。
まぁ、俺も同い年だけど。
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