20人が本棚に入れています
本棚に追加
「ゆーたーっ! 待てってばっ!」
「うるさい。静かに来い、静かに」
むっと口を膨らませ、いかにも不機嫌だと訴えている藤田。
全くもって可愛くない。
俺と藤田は高校の入学式が初対面で、何故か知らないがコイツは俺にしつこいほど絡んでくる。
俺は地毛が薄い茶色のせいで先輩方やら先生方やら同級生やらに絡まれたが一方的に無視していた。
別に髪が茶色い以外は至って普通の生徒。
遅刻はしないが始業時刻ぎりぎりに登校。
授業自体をサボりはしないが眠っている。
さほど行事にやる気はないがちゃんと参加はしている。
ただ一つ、髪が茶色いというだけで目を付けられたのは理不尽過ぎる。
まぁうちの高校は無駄に校則が厳しく、髪の茶色い生徒など俺か不良ぶってる奴ぐらいだったが。
そのため周りは勝手に俺が危ない奴と決めつけ、勝手に俺のことを避けていた。
「でもいーなー、祐太の髪っ!」
「別に生まれつきだ。俺が望んだわけじゃない」
藤田は自分の黒髪をじっと見つめ、また頬を膨らませる。
先刻も言ったが全く可愛くなどない。
それに言わせてもらえば、そっちの髪の方がいいと思う。
俺も黒髪なら無駄に絡またり、ちゃんと地毛届けを出しても教師類に煙たがられなかったのだから。
「よしっ! 卒業したら俺も染める!」
「勝手に言ってろ」
今は眠くなる春。
うちの学校はウザいほど桜の樹があり、無駄に咲き乱れている。
今日は始業式が行われ、明日は入学式が執り行われる。
別に後輩には興味がない。
まぁただ威張り腐ってるタメにも興味などないが。
最初のコメントを投稿しよう!