出会い

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「にしてもキレーだなー……」 「うっさい。散った花びらを掃除する人の身になれ」 「いーじゃん、お前がするわけじゃないんだから」  それもそうだが、どうにも桜はいけすかない。  口では表現できないが、嫌いなものは嫌い。  前に藤田に言ったところ『あれだろ? お前、ひねくれてるからみんなに好かれるもんが嫌いなだけだろ?』と言われた。  もちろん、頭を一発殴ってやったが。 「――――ろッ!」 「お?」 「あ?」  突然聞こえた女子の叫び声。  それは別に危機的状況によくある甲高い悲鳴ではなく、誰かを叱り付けるような怒声。 「あ、あそこだ! あれ? あの子って……」  藤田の指差す先にいたのは二人の男女の生徒。  桜の木の下、放課後で帰宅する生徒達の目につきにくい場所。  ぱっと見はよくある告白現場。  少し違うのは女の方が男に対して多分キレていること。 「やっぱ二組の咲山じゃん!」  その二人には見覚えがあった。  男は確か今年同じクラスになった奴。名前は……知らないが。  見た目はうちの高校では数少ない茶髪。  ようは不良ぶってる奴。  顔はそれなりにいいため女子からそれなりに人気があるらしい。  女の方は学年……いや学校でかなり有名。  クラスは隣で名前は咲山美紗。  長い黒髪は一つにまとめ、かなり整った顔をしている。  多分そんじょそこらのモデルなんかよりも顔やプロポーションはいい。  そして、何よりも真面目。  かなり頭もよく、先生方にも一目置かれるほど。  彼女の前では下手なことができない。何故なら合気道をやってるらしく、へたな男子よか強い。  で、そんな二人が桜の下にいたわけなんだが別にどうでもよかったので素通りしたかった。  素通りしたかったのに、バカは無駄に野次馬魂を燃やし、近づいていきやがった。  
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