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「何する気だよ」
「いや、ちこっと盗み聞きを」
「じゃ、俺は帰るからな」
「待てよ! 俺を見捨てる気か!」
もちろん、そのつもりだ。
理由などたやすく想像がつく。
どーせ、あの男が告って咲山がふる。
少々モテるせいか、男が何故かと詰め寄る。
で、咲山にとって茶髪など言語道断なためぶちギレたってとこだろ。
「なんでオレじゃダメなんだ!」
「うるっさい! さっさと消えてよ、目障りなんだから!」
どうやら見ていない隙に二人はヒートアップしていたらしい。
横の藤田は何故か楽しそうに見つめている。
今はド修羅場だが?
そしてまた男が何かを言い、それにカッとなった咲山が手を振り上げ――
――な、殴る気かよ!
俺はとっさに横にいた藤田を突き飛ばす。
かなり近くまで来ていたため、突き飛ばした藤田は男と咲山の間に割って入り……かなりいい音で殴られた。
「えっ?」
咲山は驚いたのか、目を見開き、目の前で頬を押さえしゃがみこむ藤田を見つめている。
――そりゃ驚くか。
で、男も一緒に目を丸くしていたが、藤田や俺に気付き、舌打ちをしてからどっかに行った。
大方、カッコ悪いとこでも見られたとでも思ったんだろうな。
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