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「ぼくらは、もともとひとつだったらしい」
「ぼくもしってる。それってどこかの本で…」
「そうさ」
「そうだ」
『はかせのけんきゅうしつ!』
「クスクス…おこられるよ」
「クスクス…おこられるね」
「そんちょうはかせは、おこるとこわいからね」
「ぼくもしってる。それってどこかの本にあるらしいよ」
『クスクス…クスクス…』
「ねぇロッソ、きみならどうしてた?」
「ハンス、きみとおなじさ」
「ねぇロッソ、ぼくはやさしい人になりたいんだ」
「ハンス、ぼくもそうさ」
「かあさんは泣いてたんだ」
「とうさんは泣いてたかい?」
「泣いてたのかもしれない」
「どうしてわかるんだい?」
「ぼくは、とうさんとおなじだから」
『ぼくときみがおなじように』
「とうさんはやさしい人だった」
「ぼくらもそうなりたいとねがったね」
「とってもかなしかったけど泣かなかった」
「おとこは泣いちゃいけないんだって」
『とうさんが、そうおしえてくれた』
「とうさんは…とても」
「うん、そうだね…」
『やさしい人だった』
「ハンス、きみはそろそろかえらなくちゃ」
「だってぼくは…」
「さようなら…」
「さようなら…もうひとりのぼく」
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