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(※注意 ここからは過去のジークの目線でお送り致します)
風で木がざわめく音で僕は目が覚めた。
(あれ?ここは、どこ……?)
何だか頭に靄がかかったみたいにはっきりとしない。
それでもぼんやりする頭でここはどこだか考えてみる。
(えっと、ここは……森?なんで僕は森なんかで寝ていたんだろう?それにこの森、村の近くの森じゃあないみたいだし……)
村の近くの森は、手入れがちゃんと行き届いていたから、森の中でも明るかった。
だが、ここは違う。
上空を覆う鬱蒼とした木々は陽の光を一切遮断し、今が昼なのか夜なのか分からない程の暗闇を生んでいた。
(困ったなぁ。これじゃあ村への帰り方が分から、な……い?)
そこまで思考が進んだ時、その言葉の違和感と共に僕の頭は覚醒した。
そして、これまでの経緯を全て思い出した。
いじめっ子に大切にしていた魔導書を破られた事、我を忘れてその子を魔法で攻撃してしまった事、村人達に捕まって変な匂いのする布を嗅がされたら意識がなくなった事。
「そうだよ、帰れる訳ないじゃないか……」
震える声が涙と共に口から溢れる。
「僕、――捨てられたんだから……」
泣き疲れたのと、まだ薬が残っていたせいもあるのだろう、
いつの間にか眠っていた僕は樹のざわめきとは違う、何か別の音で目が覚めた。
(なんだ、ろう?)
目を開けて辺りを見回してみる。
森は寝入る前とは変わらないように見えた。
だが、どこか違う。
どう表現したらいいか分からないが、空気が違うのだ。
まるで張りつめた糸のように、空気が張っているような感覚が……
ガサッ――
そこまで思考を巡らした時、先程聞こえた音がまた聞こえた。
さっきは何の音か分からなかったが、今は分かる。
茂みを掻き分けて、何者かが歩く音だ。
いや、この場合は相手が〝者〟じゃないかもしれないが……
「……誰?」
僕は不安と恐怖で震えながらも、その〝何か〟に声を掛けた。
その〝何か〟が〝者〟であることを願って……
だが、その期待はすぐに打ち砕かれた。
茂みからは低い唸り声が聞こえ始め、
そして、その茂みの奥には爛々と光る紅い二つの目がこちらを睨み付けていたのだ……
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