第一話 涙ではないです。心の汗です!

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 人間には生まれつき、どうしようもない事がある。  親がロクデナシだったり、見た目が悪かったり、最悪に運が無かったり……って、それ全部俺の事だな。 ……泣けてくる。 ※※※  俺……神山神成は神様に幸せの要素を丸ごと没収されて、かわりにあらゆる不幸を強制的に押し付けられてしまっている。  日本に存在するほぼ全ての車種の車に轢かれている(世界広しとはいえ、パトカーと救急車と消防車に轢かれた人間は俺が初めてだろう…)し、工場現場で鉄骨の下敷きになったのは十回以上はある。  強盗に遭遇した事も五十回以上ある。ギネスに申請すれば認定されるんじゃないかな。  まぁ、今も銀行強盗に巻き込まれていますが、それが何か? ※※※  一発の銃声が銀行内に響き渡り、辺りは騒然となった。  平日の夕方という事で、銀行内には二十人以上の客がいたけど、今の銃声で俺を除く全員がパニックになった。 「静かにしろッ! 下手な真似したらぶっ殺すぞッ!」  天井に向かって猟銃を発砲した男が、サングラス越しに受付の女性を睨み付けた。 「金だッ! 金を出せッ!」  受付の女性に猟銃を向けながら、カウンターに大きなボストンバッグを置いた。  俺はソファーに座って読んでいたジャンプから顔を上げ、銀行内を見渡した。
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