VS魔法使い

16/28
878人が本棚に入れています
本棚に追加
/293ページ
  「それ、私の兄だ」 「あら、ま」 大した驚きはなかった。 むしろ嬉しくさえあったくらいだ。 「それじゃ、アナタも殺したくらいじゃ死なないわけ? あんな風に、心は死んでしまっても体は死なない――化け物」 嘯くように笑い、顎で捨てられた男を示す。 「――――」 自らを死ねないと評した男は、まるで死んでしまったかのように動かず、惨めに血の絨毯の上に寝そべっていた。 口からはひゅうひゅうと辛うじて息をしていることから、恐らくは生きているのだろうが。 目は焦点も合わず虚ろで、だらしなく涎を垂らしながら、糞尿を垂れ流し、もはや生きている人間になんか見えやしない。見たくもない。 いっそ死体の方がまだマシなくらいに、醜いもの。 ただの結果と成り果ててしまったもの。 彼は、たしかに肉体的に死ぬことはなかったのだろう。 ただ、自身を何度も、絶え間なく永遠襲い続ける死には、体が死ななくとも、心の方が死んでしまった。 不死身の肉体でありながら、心だけはまだ、人間だった。 「あれもなかなか、面白いことは面白かったんだけどね。飽きるのよ。死に方にレパートリーってものがないわ」 ゆえに、何度も何度も、普遍的に殺し続けることが出来る化け物の前に、そんな死なないだけのことなんてのは、どこまでも無力だったのだ。  
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!