秋雨

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   ぽつりぽつり。 頭上から降る雫は静かに私を浸食してゆく。 それを冷たいだなんて思わずに、寧ろ心地良いとすら思ってしまう私は異常なのだろうか。  ぽつりぽつり。 空は限り無く灰色で、ベタな表現なのだけれどまるで私の心境を比喩しているようだと思った。  ぽつりぽつり。 目の前の墓標もそれに染まって滴る水滴は地面に吸い込まれる。さもそれが当たり前であるかのように、自然に、蓋然に、静かに、滴り落ちて行くのだ。まるであの人が、いつかはそうなってしまうとでも云うように。  ぽつりぽつり。 虚しいと、空虚だと思った。過去が色褪せて行くような錯覚。虚しい、空しい、モノクロな映像が走馬灯のように脳裏に流れた。少し前までは輝きを放ち鮮やかに映っていた物事全てが今は灰色でしかない。  ぽつりぽつり。 涙なんて、流れなかった。別にあの人がまだ生きてるなんて思ってるわけじゃない。ぽっかりと穴が空いて感覚が麻痺してしまったように全てが灰色に写るだけ。唯、それだけだ。
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