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並ぶ机をすり抜けながら、紫音に向かってぼやいた。
「さっきコンビニで買い物してたわけ。そしたら、そこの店員の野郎、俺がエスパーとわかると、態度を変えやがったんだ」
後ろに引いた椅子に、思いっきり座った。
紫音は「そんなことか」と、呆れたように栞を挟めたページを開いて、再び本を読み始める。
「あー、ちきしょうー!」
怒りをぶつける的を失った大地は机に伏せた。
―そもそも、なぜコンビニの店員が、ただの客の大地を、エスパーとわかったのか。
それは、エスパーは生まれたときから、片目の色が違うからである。
ちなみに、大地の右目は赤い。
「朝からそんなとこ、行っちゃダメでしょ?」
窓から吹かれた風が、シャンプーの甘い匂いを、大地の鼻に運んだ。
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