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それに、ダメ出しにはもう一つの理由がある。
それは戦姫の力を、なるべく第三者(クリス)には見せたくないと言う事だ。
飽く迄も、出来ればの範囲だが。
力を隠した末に殺されました……では立つ瀬が無い。
そしてもう一つ、そもそもどうやって外に出るか?
現状では方法が無かった。
「とにかく、私達が一介の旅行者でしかない以上、外には出られない。せめて、冒険者とか傭兵とかだったら許可も取れたけどね」
力が足りない。
覚悟が無い。
土俵にも上がれない。
ないない尽くしだ。
それが未だ子供に過ぎないユートとシーナの限界。
厳しい現実だった。
意気消沈するユート。
これでは学園が始まる頃になっても到底、王都に向かう事は出来ないだろう。
そんな暗い雰囲気の中で、クリスが話し掛けてくる。
「もしも出られれば、盗賊をどうにか出来ますか?」
「それは……判らない」
「判らないでは駄目! やってみてダメでしたなんて通用しません! 一度だけなら何とか出来ます。
だからもう一度訊きます。やれますか?」
ユートは、いつの間にか荘厳な雰囲気を醸し出しているクリスに驚きながらも答える。
「やってみせる!」
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