プロローグ

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十分(十円)ご縁(五円)がありますようにって意味があるらしいんだけど……もしかしてこれが原因だったのかな。この後の十分過ぎるご縁の原因は……。 目の前で手を二回打ち合わせる。 「神様! どうか如月あやめ先輩に勝てる様にして下さい」 さっきも言ったけど、僕は別に神様なんて信じてなかったから、本気でお願いしている訳じゃない。だから、 「ヨシ! ならばその願い、儂が叶えてやろう!!」 小学生でも隠れられない小さい社の中から、大人の女性の声が聞こえてきた事には驚いた。 「え?」 ……空耳? 瞬間的にそう思った。周りに誰もいないし、社は人がいるには小さ過ぎる。 「何処を見ておる。儂はここじゃよ」 声は若いのに、随分と年寄りみたいな話し方をする。 それよりまた聞こえてきたって事は、空耳ではなさそうだ。 「誰? お化け!?」 「阿呆! 儂をその様な雑魚と同じに思うでない」 会話が成立してる……ホントにお化けじゃないのかな? 「まだ見付けられんのか? 注意力散漫じゃのう」 よく聞くと、声は頭上から聞こえてくる。 とっさに顔を上げると、そこには確かに誰かいた。 時代劇に出てくる花魁みたいな着物を、下品にならない程度に着崩している。漆黒の髪は長く背中まで伸びていて、顔は着ている物と違って今風の化粧をしていた。
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