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でも、そんな事より僕が驚いたのは……その人が宙に立っているという事だった。
お化け? マジシャン? 超能力者? 宇宙人?
様々な事が頭を巡ったけど、僕が取った行動は……、
「うわあぁぁぁぁッ!」
ただ全力で逃げる事だった。
「あ、こら……」
何かを言ってたのは聞こえたけど、それを無視して全力で駆け出した。
※※※
僕の家は現在母との二人暮らしで、父は海外に単身赴任中である。
自分の家に戻ると途端に安心感が得られた。借家の一戸建てが、まるで高い防壁に守られた城の様な気になってくる。
「ただいま~」
靴を脱いでリビングに顔を出すと、すでに母は二階の自室に行った様で、誰もいなかった。
相変わらず早寝な人だ。まだ九時前なのに……。
さっき見た現象を話したかったけど、わざわざ起こしてまで話す内容ではないので、取り敢えずお風呂に入る事にした。
※※※
濡れた髪をバスタオルで拭きながら、二階の部屋のドアを開けると、そこには予想もしていなかった人がいた。
「オ……儂を待たせるとは何様のつもりじゃ」
母に話そうと思っていた、さっき宙に立っていた、花魁みたいな格好をした女の人がベッドに座りながらテレビを見ていた。
「………」
僕はきっと疲れているんだ。だからいもしない女の人の幻なんて見るんだ。
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