41595人が本棚に入れています
本棚に追加
生暖かい笑顔で自分を納得させると、僕は部屋のドアをゆっくりと閉めた。
「こらッ! 何を現実逃避をしておる!」
ドアを閉める直前まで確かに部屋にいた女の人が、いつの間にか背後に立っていた。
「ウワァッ! お化け!!」
「だから違うと言っておろう。儂は仙華〈せんか〉……」
薄暗い廊下でもはっきりと分かる、妖艶な笑みをその女の人は浮かべた。
「……妖怪じゃ」
……仙華さんがそう言うと、僕は目眩がして倒れそうになった。
※※※
「つまり、仙華さんはあの社に祭られていたんですか?」
取り敢えず、自室で仙華さんにお茶を出す。本当は部屋に入れたくなかったけど、いつ母が降りて来るか分からないリビングに連れていく訳にもいかない。
仙華さんは出されたお茶をすすりながら頷いた。
「そうじゃ」
「それでたまたまお参りをした僕の願いをわざわざ叶えに来てくれたんですね?」
「理解が早くて助かるのぉ」
そう言いながら、仙華さんは嬉しそうに笑った。
その顔は客観的に見たら鳥肌が立つ位美人だったけど、僕は別の意味で鳥肌が立っていた。
「そりゃ宙に立ってたり、瞬間移動されたりしたら普通の人間じゃないって分かりますよ」
「そうか。儂はこの通り美人じゃから、最初に妖怪と信じさせるのに苦労するんじゃ、美人だから」
「何で二回言うんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!