41593人が本棚に入れています
本棚に追加
/912ページ
「それじゃあ、早速始めようかしら」
何事も無かったかの様に振る舞うあやめ先輩の右手を、僕はガッチリと掴んだ。
初めて握ったあやめ先輩の手はびっくりする程小さく、柔らかかった。この手でどうやって雅人をアイアンクローで悶絶させる事が出来るのか、不思議でしょうがない。
「レディ……」
いつの間にか復活した雅人が、僕とあやめ先輩の間に立ってレフリーをしてくれる。
「ゴーッ!!」
雅人の合図と同時に、渾身の力を込めてあやめ先輩の手を倒そうとした。
その瞬間、木が砕ける破壊音と同時に、僕とあやめ先輩の肘が乗っていた机が砕けて崩れてしまった。
「……あれ?」
「おいおいおいおい……」
間の抜けた僕の呟きに、雅人が呆れた様にツッコミを入れてきた。
どうやら、僕とあやめ先輩の力に耐え切れず、机が壊れてしまったみたいだった。
「えっと……」
予想外の展開に僕が呆然としていると、
「……プ、アハハハハッ」
突然あやめ先輩が笑い出した。
「驚いたよ竜也くん。君にこんな力があったんだね」
気が付くと、あやめ先輩は握りを変えて、僕と握手するみたいになった。
「それじゃあ、七月二十日……楽しみにしているよ」
あやめ先輩の言葉に、僕は天にも昇る気持ちになった。
最初のコメントを投稿しよう!