━悪魔の住む村━

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☆19 喫茶店『ワラハンド』 ---------------------- 青森市の郊外にその喫茶店はあった。 わたしはタクシーの運転手に料金を払い、喫茶店のドアノブに手をかけ引いた。 「カランカランカラ~ン♪」 ドアにはヨーロッパのアルプス地方で、放牧する牛の首につける大きなベルがついており、わたしがドアを開けると気持ちのよい音が店内に響き渡る。 中に入り軽く見渡してみるが店内にはマスター1人しかいない。 信ちゃんはまだ来ていないようだ。…とその時、 「源ちゃんかい?」 そのマスターがわたしに声をかける。 ん?まさか、ひょっとして…? 「し、信ちゃん?」 「おぉ、よく来てくれた!!お疲れサンッ!」 喫茶店のマスターは信ちゃんであった。…どうやら、この喫茶店は信ちゃんの店らしい。 : : 沢松村が廃村になったあと青森市に引っ越し、いろいろな職業を経験したのち、定年を機に20年程前からこの喫茶店を経営しているそうだ。 「なかなか雰囲気のいい店じゃないですか。」 「ありがとう。ウソでもそう言ってもらえると嬉しいよ。」 「いや、ウソなんかじゃ…。」 …なかった。 このさわやかな木の香り。青森産の『ヒバ』を贅沢に使用したログハウス風の喫茶店。とても周りの景色にマッチしている。 店の名前が『ワラハンド』(津軽弁で子供達)とはかわいらしい。 確かに店内は子供の遊び場のようなにぎやかさだ。 きっと子供が大好きなのだろう。 ☆24に進んで下さい。 .
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